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なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

小説の中の語り手「私」/小田島本有 (金, 17 5月 2024)
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なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

小説の中の語り手「私」/小田島本有 (金, 17 5月 2024)
  小説の中の語り手「私」/小田島本有       文芸評論家で釧路工業高等専門学校名誉教授である著者による近代文学作品に関する評論集です。著者は、私が今年の3月末まで2年間生活していた釧路市でとても精力的に活動されていて、港町ベース946BANYAで定期的に開催されている釧路読書会の主宰もされています。私はそちらとは傾向が異なる釧路ゆるゆる読書会に参加していましたが、著者の名前はそこでもたびたび耳にする機会があり、畏れ多いとは思いながらもいつか知り合える機会があればいいなと思っていました。そんな中、946BANYAで開催している哲学カフェで同席する機会があり、その後の懇親会でも席を同じくして文学について語らう機会に恵まれて、顔を覚えていただけただけでなく、私が早期退職を決意して釧路を離れるにあたってこの自著を贈ってくれました。   ただ小説を読むことが好きなだけの人間にとって、文学に関する評論集と聞くと、手に取ってページを開くまでの勇気と読み通すためにそれなりのパワーが必要なのではないかとちょっと構えてしまいがちですが、この作品は文章が一般の読者向けでとても読みやすいものでありながら、近代文学の要となっている一つ一つの作品に向き合う著者の真剣さが伝ってきて、ぐいぐいと引き込まれていきました。著者が紹介している9作中6作は私も既読の作品でしたが、読む人ごとに作品に対する視点が異なるうえに、理解も感想も人それぞれである中で、まさに正鵠を射るといった論評の確かさに深い読み応えを感じました。特に、最初の2編は森鴎外の代表作である「舞姫」と「雁」ですが、先述した読書会の懇親会の席で、酔った勢いで「森鴎外の作品は、著者の上からの目線が随所に感じられてその良さがよくわからない」などと発した自分の言葉を思い出し、作品に対する理解の浅さにi今更ながらとても恥ずかしくなりました。そのほか、有島武郎の「生まれ出ずる悩み」や島崎藤村の「新生」などは私が大好きな作家であり、芥川龍之介の「地獄変」、太宰治の「津軽」などもすでに読んだことがある作品でしたが、各作品に対する著者の論評はまさしく「味読、深読」であり、私のようなただの小説を読むのが好きというだけの一介の読者とは一線が引かれた高いレベルにあります。でもこの作品がすごいところは、文学作品を読み理解することについて、そのレベルを一介の読者の視線にまで下げたうえで、広くわかりやすく指南してくれるところだと感じました。本を読むという行為は、読者一人一人の自己満足の世界であると私は思いますが、著者は独特の異なる視点をもって作品を深堀し、読者の満足を超えたところにある文学作品の面白さを提示してくれます。   上述した紹介された既読の作品を再読してみるとともに、未読である三島由紀夫の「金閣寺」、倉橋由美子の「パルタイ」、遠藤周作の「深い河」についてもぜひ読んでみようと思います。    
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